【08】簡単な任務のはずだった

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 いきなりスタートから落ち込んだ先輩カギヤに氷動は一抹の不安を覚えたが、今さら引き返すわけにもいかない。  それに自分たちより先に来て鍵を開けた誰かが、今まさに店の中にいるかも知れないのだ。  氷動はさらに警戒した。  拳銃は持ってはいなかったが、二人は三段ロッドを携帯している。  コンパクトにたたむことの出来る警棒だ。  その扱い方については、元警察官である彼らにとってなんら問題はなかった。  いざという時はこれを使うことになるだろう。  ゲームショップの中は静まり返っていた。  窓がないため真っ暗だが、人の気配は感じられない。  カギヤが手持ちのライトを点けたので、続けて氷動も点けた。  マリネが改造したライトは非常に強力で、小さいながらも広範囲を照らす優れものであった。  二人がライトを使用しただけで、薄暗いながらも店内全体を見渡せる。  氷動は、ゲームソフトやゲーム機本体が並べられた棚には手を触れずに、棚の間を行ったり来たりしながら、鋭い目付きで注意深く店内の様子を見回していった。  誰かが入って荒した様子は感じられない。  店内は営業していた時のままの姿で、人間だけが突然消えたような印象だ。
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