【08】簡単な任務のはずだった

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 慎重にドアを開け、二人は事務室に入った。  すると部屋の一角に、入り口からの視界を遮るようについたてが立ててあった。  氷動が近づいて覗き込むと、壁に付けて置かれた事務机の上に置かれたデスクトップ型のパソコンが目に入った。 「とりあえず、そのパソコンを起動させよう。僕はこっちをやってるから、よろしくね」  氷動は(うなず)くと電源を入れ、データをコピーするための『スーパー大食いちゃん』を手に持ち、パソコンが完全に起動し終わるまで待機した。  その間、カギヤは書類棚の鍵を開けてはまとめて取り出した書類を上手く配置して撮影し、再び書類を戻して鍵を閉めるという作業を慣れた手付きで続けていた。 「よし、準備が出来た」  事前に取り扱い方を聞いている氷動は『スーパー大食いちゃん』をUSBの差し込み口に接続し、その側面にある小さなボタンを押した。  すると五匹の可愛らしい子ブタが画面に出てきた。  そして画面の上からすごい勢いでごちそうが降り注ぎ始めると、争うように食べ始める。    それに負けないくらいすごい勢いで、画面の下に大きく表示されている数字が増えていく。  この数字は内容をコピーした割合を表しており、100になれば完了という意味らしい。  画面をチラリと覗き見たカギヤが、驚いたように言った。 「今までのは子ブタが三匹だったんだけど、こりゃ確かにスーパーだね」   コピーしている間、氷動もカギヤに机の引き出しなどの鍵を開けてもらい探してみたが、他に電子機器の類いは見当たらなかった。
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