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「終わったようですね」
パソコンの画面から綺麗さっぱり食べ物がなくなり、五匹の子ブタたちも骨になっていた。
食べることに夢中になりすぎてうっかり自分たちも食べてしまったというブラックジョークのつもりだろうが、こんな状況で笑えるわけもなく氷動は眉をひそめた。
悪趣味だ……。
『スーパー大食いちゃん』を回収し、撮影を終えたカギヤと事務室を出て売り場を通り抜けようとした時、下ろされた正面のシャッターがガタガタと鳴った。
緊張感が走り、氷動とカギヤが顔を見合わせる。
「大丈夫だ。開けられた様子はねぇ」
シャッターの辺りから男の声が小さく聞こえた。
このような言葉を発するということは、一人じゃないと考えられる。
カギヤは氷動に顏を近づけると、小声で言った。
「氷動君だけ先に行って」
「!」
「裏口を出たら、右に行ってフェンスを飛び越えるんだ。僕には無理だけど君なら若いし、身体能力も高そうだから出来るだろう?」
そういいながら、撮影に使用した超小型カメラと車のキーを氷動に託した。
「これも『スーパー大食いちゃん』と一緒に、オヤジさんに届けてくれ」
「ですが、それじゃカギヤさんが」
「僕を信じて。僕も君を信じているから」
カギヤは自分用の三段ロッドも氷動に渡した。
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