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「もたもたしてると、もう一発お見舞いすっぞ!」
「す……すみませ……」
カギヤが懐から、おぼつかない手つきで革の長財布を取り出すと、ケンジがひったくるように奪って赤シャツの男に差し出した。
財布の中には一万円札を含めた数種類の札と、小銭だけを入れている。
「ざっと6万円弱か……詫び料としちゃ全然足りねぇが、サツの見回りが来たらまずい。ケンジ、そろそろ行くぞ」
「ったく、運のいいおっさんだぜ」
と、言いながらケンジがカギヤの胸倉をつかんだ。
「おい、おっさん!分かってんだろうが、誰にも言うんじゃねぇぞ!」
「は……はい……」
ケンジは根っから暴力が好きらしく、最後にもう一発カギヤを殴ろうとしたのだが。
バシッ!
「があっ!」
ドシャッ!
突然、激しく響いた音と赤シャツの男の異常な声に、思わず手を止めて振り返る。
すると赤シャツの男が地面にうつ伏せに倒れており、それを見下ろすように三段ロッドを手にした氷動が立っていたのだ。
どうして行かなかったんだ!
驚きに見開かれたカギヤの目が、そう叫んだ。
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