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もしも「96」に捨て駒として使われても、氷動は自分自身が納得して非合法チームに入ったのだから構わないと考えていた。
しかしアンダーグラウンドで生きる人間であっても、カギヤは仲間を優先して助けてくれるような優しさを持っている男なのだ。
表も裏も、どこで生きていようが関係ない。
班に入ったばかりの自分なんかのために、命を落としてはいけない存在に思えた。
氷動は、もう迷わなかった。
カギヤさんを置いては行けない!
そして現在、氷動は再びゲームショップの裏口のある通路にいる。
兄貴分である赤シャツの男を攻撃されたと知り、ケンジは呼吸を荒げて目を血走らせた。
まったく予想していなかった襲撃をうけたことにより、一気に興奮状態に陥ったようだ。
「兄貴!大丈夫スか!なっ……なんだぁテメェは!」
ケンジが脅すように怒鳴りつけたが、血まみれのカギヤを見た氷動にとっては、もはや雑音でしかなかった。
自分を逃がしてくれたカギヤさんをよくも……。
氷動は体の中で、ガチャガチャと鎖が激しく音を立てているような感覚を覚えた。
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