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しかも頼みの兄貴分である赤シャツの男は、気絶したままだ。
ケンジは青ざめた。
この拳銃は「脅し用」として赤シャツの男からもらったのだということを、今さらながら思い出したのだ。
しかし頭に血がのぼった彼は、武器として使用してしまった。
手に持っている黒い鉄の塊が一転して底知れぬ恐ろしいバケモノに思えてきたケンジは、それを足元に投げ捨てると、
「ひっ!ひぃいいいいいぃ!」
と、情けない叫び声をあげた。
足の震えが止まらない。
そして拳銃の感触を払拭したかったのか、自分のズボンでやたらと手を拭き始めた。
もう彼の目には、カギヤも氷動も見えていなかった。
周囲も気にせず半ベソをかきながら、倒れている赤シャツの男に近づくと強引にかつぎ上げた。
兄貴分の輝く革靴をアスファルトにズルズルとひきずって、何度も転びそうになりながら、ショップの横にある細い道路を捜査員たちの声とは逆の方向へ逃げて行った。
助かった。
と、本来ならこう思うはずだ。
だが「96」は非合法チームである。
正体を知られてはならない存在なのだ。
警察に保護されるなんて、もってのほかだ。
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