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「笑わないんですか?私のおかしな説明を聞いて」 「笑ってほしいか?」 「・・・いえ、私の大事な時間を笑ってなんて欲しくない」 「遠藤、他の奴らにはこれからのこと言うんじゃないぞ」 ポケットからスマホを取り出してどれにしようか迷い、これだと決めると再生した。 「これを作ったのは大学受験の最中。ちょっとギター触ろうとしたら夢中になって作ってた曲だよ」 「先生は作曲するんですね、すごい。私は言葉しかできないから尊敬します」 「ありがとな。でも色々な音楽関係の場に曲を送っても残念通知しか来ないのが現実」 自分で言って笑った後、今度は遠藤が自分のスマホを操作。そして俺に見せてよこした。 虹の終わりが輝くのはそこに宝が埋まっているから 世界が輝きを失わないのはすべてのものが愛し合うから 世界の光は誰にも奪えない 「綺麗だな、そして想いもこもっているよ。遠藤は将来何になりたい?やっぱり言葉にかかわること?」 「はい、作詞家です。私が集めた言葉たちを曲に乗せて色々な人に聴いてほしい」 キラキラとした顔をしてそう答えた遠藤は夢や希望に満ちていた。俺もあんな顔してたっけな。 今でも作曲や歌ったりもするけど、大量の残念通知を見ると遠藤の半分も笑っていないのかもしれない。 「こんなこと言える立場じゃないけど、先生の曲もっともっと素直に書いていいはずです」 「え?」 「プロっぽくとか、流行りに寄せるとかしないで先生の世界をバーンと曲にしていい、と思いました。あの、生意気で、やっぱりすみません・・・それじゃあ先生さようなら!」 ぺこりとお辞儀をすると遠藤は慌てて帰って行った。誰もいなくなった教室には半ば茫然としている俺とその俺が創った曲がスマホから聴こえるだけ。
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