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プロローグ 秀
「秀君」
彼女は笑った。嬉しそうに。悲しそうに。
「ありがとう。大好きだった」
だんだんと彼女の姿は薄くなっていく。
「嘘だろ??」
慌てて彼女の手を掴むと彼女は手を離した。
「ダメだよ秀君。そんなことしたら秀君まで消えちゃう。ちゃんと家族を大切にするんだよ。お嫁さんも見つけて幸せにしてあげてね」
「行かないで!」
そうしている間にも彼女の姿は薄くなっていく。
「俺の嫁は玲だけなんだ!」
その声は部屋に虚しく響いた。言い終わる前に彼女は消えてしまった。
チリリリリリ……
「ーー今日もまた、助けてやれなかった……」
その声もまた、部屋に虚しく響くだけだった。
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