散る

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ブザーが鳴った 3年生の引退が決まった 俺の最後の1年間が始まった 高校2年のウィンターカップ それは1年を締めくくる 高校バスケ最後の全国大会 俺の高校は初戦で敗退 横断幕に全国制覇の文字 掲げた目標に遠く及ばず 最後に残ったものは後悔と失望 コート上で泣き崩れる後輩 土壇場でシュートを外し続けた自責 その光景をスタンドから見ていた俺は それすらも羨ましく思え 泣いている先輩を横目に 来年の自分をコート上に思い描いていた 俺の要るべき場所はスタンドではない ベンチでもなく、コートの上 ユニフォームを着て、背番号は何でもいい とにかく チームを勝利に結べつけるプレーをして 全国制覇をして 優秀選手に選ばれて 大学への推薦を獲得する 沸々と煮えたぎる野心を 隠しながらスタンドを下り 体育館の通路へ出ると先生に呼ばれた 「お前が部長だからな」 42歳にしては目立つ白髪頭を掻き上げて みんなが見ている中で 俺を新チームの部長に指名した 相変わらず有無を言わさない言い方 決定事項しか伝えず その理由についての説明がない 「わかりました」 そう答えた俺は心の中で 部活を辞めると決意した
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