散る

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俺が部活を辞める そう決意してから2週間が過ぎた 3学期を迎えた教室 そこへ向かうことに苦痛に感じていた 恥ずかしくて、情けなくて 気を使われるのが辛かった 朝、目覚める度に 今日こそは部活を辞めようと言い聞かせる 試合に出るために耐えて来た練習 目指す目標を失ったにもかかわらず 部長という立場に立たされ その立場上、誰よりも声を出して チームの模範として振る舞い やる気のない選手に注意し 結果の出ない選手には励ますべきなのだろう 部長に指名された後 先輩に言われた言葉がある 「部長の姿勢が、チームの雰囲気を作って、それが結果に繋がる」 俺は他人の為にバスケをやって来たわけじゃない にもかかわらず、試合にも出ない人間が なぜ、勝敗の責任を負わなければならないのか 何一つ納得できないし、受け入れたくもなかった それなのに俺は、辞める勇気が出せず 誰よりも声を出して、走り続けていた 部活が終わってからの自主練 自分に課した100本の3Pシュート 意味もないのに続けているのは やる気がないと陰口を言われたくなかっただけ くだらないなと思いながら、意地になっていた その帰りに、偶然を装った穂乃果と駅で出会った 部長の役割を知らない穂乃果 プレゼントのミサンガが胸に刺さった 足に付けると言ったけど 付けたところで、望んだ夢は叶わない ミサンガはカバンの底にある 穂乃果には申し訳ないけれど どうしても付ける気にはなれなかった 家に帰って、ベッドに寝転んだ YouTubeで垂れ流す音楽 マイミックスリストを選択 よく聞く曲がランダムで流れていく 一度も聞いたことがない曲が度々流れる 自分がよく聞くバンドと同じような系統の曲 名前は知っている でも、声が気に入らなかった 異常に高くて耳障りにしか思えない こんな奴らが売れていることに腹が立った YouTubeを止めて、目を閉じた 考えるのは部活を辞める理由 両親や友達、先生も納得するような 正当な理由を探している みんなが仕方ないって思える理由 一階から母の笑い声が聞こえて来た 穂乃果の母親と電話していると思った それから1時間ほどして 母が階段を上がって来た 晩御飯が出来たのかと思った だけど、いつまで経ってもお呼びがかからない 部屋の前に立っているはずなのに 不思議に思ってドアを開けた 母は泣いていた
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