散る

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「どうしたの?」 「穂乃果ちゃんのママから聞いたよ」 母は何を聞いたのか言わなかった 言わなくても、部長のことだってことはわかった 母は全部知っている 俺が初めてバスケットボールを触れた瞬間も 初めてゴールを決めた瞬間も 試合に勝った日も、負けた日も どれほどの思いで バスケを続けていたかを知っている その母が泣いている 辞めるなんて言えなかった 「何泣いてんだよ?」 「だって・・・」 「部長って指定校推薦でかなり有利らしいよ。選びたい放題だって、田中先輩が言ってた」 気休めにもならない言葉 いつまでも泣き止まない母には参ったし これで辞められないと思うと 残りの高校生活が憂鬱でしかなかった そして、翌日の朝 駅で穂乃果と出会った どうやら今回は、本当に偶然のようだった 「おはよう」 穂乃果に挨拶されて俺は気が付いた 間違いなく部長の立場に気づいている いつもだったら挨拶なんてしないで 自分のしゃべりたいことを いきなり話し掛けてくるから 「おはよう」 俺が挨拶を返すと、そこで会話が途切れた なんてわかり易い奴なんだと思った だけど、なぜか自分から言い出せなかった プライドのせいなのか、何なのか 部長であることを認めたくないのだろうか 穂乃果といて、俺は初めて気まずい思いをした 「私のフェイスブック見た?」 穂乃果からの突然の質問 まぁ、そんなことはよくあることで 俺は気にも留めずに 「見てないよ」 それで会話が、また途切れた 穂乃果が何かをやらかしたんだなって思ったけど いつも通り気づかないふりをしてやり過ごした
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