散る

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「どうしたの?」 「夏子と勉強してた」 「誰?」 「クラスの友達。先帰ったけど」 「そう」 会話はそれだけ 謝ろうと思い続けて、出来なくて 悩んだ末に、日にちだけが過ぎていって お互いの間に出来た距離が人、2人分 手を伸ばせば届く距離だけど 私たちはそのまま駅まで歩いて 電車に乗って 最寄り駅に着いて 改札を出た 剛生はわざわざ遠回りをしてまで 私を送ってくれる 私は、合わない歩幅を気にして 下ばかり見ていた帰り道 先に口を開いたのは剛生だった 「日曜空いてる?」 まるでデートの誘いにしか聞こえなかった 「空いてるけど・・・」 言葉尻がしぼんだのはその日 剛生の部活があるのを知っているから 「どっか行こう」 それで私の家に着いた 戸惑った私は、返事をするのを忘れていた 「行きたくないの?」 「行きたいけど」 「じゃあ、11時に駅に集合ね」 剛生はそう言って走って消えた 私の頭の中に霜田くんの姿が浮かんだ 伝えるべきか、どうなのか 悩んでみても、私の答えは決まっていた 日曜の11時 私は駅で待っていた だけど、いつまで経っても剛生は来なかった 連絡すらなかった 事故でもあったのかなって一瞬思って、否定した ちゃんと部活に行っているって思ったから どうせ剛生のことだから・・・
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