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「実際、浴衣とかちょー似合ってたもんねー、去年の夏祭り」
「いつの話よ」
お嬢様って雰囲気を醸し出してるくせに純和製もイケるとかマジありえない。半分ぐらい分けて欲しい。主にお嬢様成分を。
「綾香って変なところで子供っぽいよね」
「子供っぽいって何がよ」
「ブラの色とか髪型とか」
「なっ……!!」
「もうちょっと女の子らしくしたら?」
「うっさいなぁっ?!」
余計なお世話だ!
ちらりと、タンスに仕舞い損ねて放ったらかしされている下着類に目がついて、コソコソとそれらを片付けた。なんて言うか、だってメンドくさいんだもん。
ブツブツ文句を言いながら、そんなことに気を使うぐらいなら女の子らしくなくていいと正直思う。
「正直ねぇ……?」
祥子は呆れ顔だ。たぶん。
「そんなことより今はしょーこの話でしょー!?」
矛先を変える。
このままだとグサグサ刺されたままヤスリがけまでされそうだから。丸くなっちゃう。私が。
「それでその意中の王子様は誰なのさ? 結局教えてくれてないじゃん」
祥子に好きな人がいると言うのは去年の冬頃から知っていた。
先輩を始め、次々と玉砕していく男子を見て不思議に思って聞いたのだ。「なんで付き合わないの?」と。すると祥子は照れ臭そうに教えてくれた。「だって好きでもない人と付き合いたくないじゃん」って。
「そのお嬢様に選ばれた素敵な殿方ってのが私は気になるんですけどねー」
とは言いつつも、実際のところどうでもよかったりする。
けどちゃんと聞いておかないと話が前に進まないし、そろそろお風呂に入りたい。さっきからお母さんが下から早く入れって煩いし。
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