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第3話 15センチの距離
翌朝。学校の近くで祥子に声をかけられて昨日の続きを話した。
祥子は見ているこっちが恥ずかしくなりそうなぐらい可愛かったけど、私は私で一晩たって落ち着いたって言うか雨の冷たさで冷静になったって言うか、とにかくまぁ、落ち着いたもんだった。
国語、数学、英語、美術に体育と1日を難なく過ごして日本史の授業が始まる直前まではいつも通りだった。
まさか、まさかまさか、教科書を家に忘れて来るなんて思っても見なかった。
迂闊だったなー……。
そもそも日本史のは他のと比べて分厚いし、大体学校に置きっぱなしにしているのに何で持って帰ってしまったのか見当もつかない。
何かの教科書と間違えてカバンに入れたか、そのまま「なんでこんなもん持って帰ってきたんだろ」って机の上に置きっぱなしにしたか。うーん……日頃持ち運ばないものは目に留まりづらいって言いますしなぁ……?
ぼんやり窓の外を見上げて思い馳せる。
教科書よ、今いずこへ。
「……ぉィ」
コンコン、と机の隅を叩かれ意識を引き戻された。
すぐ隣には噂の亮太だ。
「(なによ)」
一番後ろの席とはいえ口に出して話すと注意される。
ノートの端にシャーペンで書いて告げる。
平然を装っては見たものの内心ドキドキだ。昨晩の祥子の一件以来、こいつの顔を見るのがどうにもむず痒い。
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