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「薫様、大丈夫どすか? 」
物心がつく頃には、もう絹の事が分かっていた。
「だ、大丈夫! すぐ、行く……ヒィ!? 」
「あっ、薫様! 」
「よっと、気をつけやー。」
そう言って、若き坂本龍馬は、住吉大社の太鼓橋から転げ落ちそうになった私、水元薫の小さく細い身体を片手で、すんなりと受け止めた。
太鼓橋の円い天辺から、十になる少女の絹が両手で口を塞いで、お侍さんに直ぐに謝った。
「もっ、申し訳ございません! 薫様、早くお離れになって! 」
「き、絹……、足をぐねったかも……! 」
「えええええっ!? 」
「はははっ、わしも同じような事を子の頃にしよった。よいっしょ! 」
「わっ! 」
「きゃっ!? 」
今になると、飛んでも無いお人の肩に担がれたんやと周りに自慢できるんやけど、それは、絹との二人だけの秘密やった。
しかも、この時、絹は私を悠々と肩車した坂本はんに、恐れを忘れて「ギャンギャン! 」と頬を赤らめて歯向かっていた。
また、坂本はんは楽しそうに「ハハハッ」と笑った。
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