「想いを刻んで」

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「そんっな事、聞いた事ありまへん!! 『鉄の車』が人や物を沢山乗せて、走るやなんて!! 」 「だから絹、お侍さんが言うてはるやん。まだ、『鉄の長い車』は日本で走っていないって。これからやって。」 「何、呑気に言ってはるんどす!! 薫様は、船問屋の若旦那様どすえ!! 人や物を沢山乗せて運ぶのは『船』どす!! 」 「なんと、薫さん、船問屋の若旦那さんか! 『蒸気船』というのも、外国にあるぜよ! 」 「何なん、このお侍はん! 何者なん!? 『外国』って!? 」 「まあまあ、落ち着きや。おっ! 太鼓橋の天辺からは、こんな綺麗な夕日が拝めるがやか。おっきい鳥居も拝めよる。あっ、お嬢ちゃんのほっぺと同じがや! 」 「もー!! ほんっま、失礼なお人!! 話、反らさんといて!! 」 「反らしゃあせん」と、帯の両脇にひっつく私達に住吉浦の方角を指差した。瞳が、きらきら揺れていた。
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