第2部

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電車を乗り継ぎ、2時間ほど。 全く人の降りない午前の駅は静かでどこか懐かしく思える。 色で例えると若草色みたいな空気が充ちた場所。 胸いっぱいにそれを吸い込むと、細胞ひとつひとつが気持ちいいと喜ぶ、そんな爽やかで穏やかな町だ。 「光さん、疲れたでしょ?」 「いいや、全然」 「ここからもうちょいあるんだ。遠くてごめんね」 タクシーの手配をしなきゃと申し訳無さそうに言う一途に、歩いて行けないのかと尋ねると、「30分くらいかかるかもよ?」と若干嫌そうな顔をした。 「こんないい天気なんだし、運動不足解消に歩こうぜ?」 「えー。運動なら昨日もシたでしょ?」 「お前な、こんな素敵な場所でイカガワシイことを口にするんじゃない!」 「だって本当のことじゃん……」 「いいから!行くぞ!案内しろ!」 とは言ってみたものの、久しぶりだという一途が道を間違い、歩いたのは結局小一時間だった。そして辿り着いたのは、どこにでもありそうな二階建ての家屋だった。 門扉から家の右手にある玄関のエントランスまでは緩くカーブして敷石が敷かれ、手前に広く取った庭の芝生はきちんと管理されているようで、青く瑞々しく輝いて見えた。 敷地は白いメッシュフェンスで囲われ、門扉の脇にアメリカの映画にでも出てきそうな白い道しるべが立っている。 ちょっとだけ日焼けして剥げた黒い文字を目で追いながら読み上げた。 「……ひまわり園?」 「うん」 それがこの家の。 「オレんち」 一途の家の名前だった。
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