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俺の気も知らないで、明里も春陽も目をランランと輝かせ、矢継ぎ早に一途へ質問を投げかける。
「どっちから告ったの?」
「オレ、ですね」
「どこで?どんな風に?」
「……ふふ。ナイショです」
「光のどんなとこが好き?」
「全部です」
「やっぱハジメテって痛い?」
「それは……どうですかね」
「光、いい旦那になれそう?」
「そうですね……でも」
クス、と得意の嘘くさい笑顔で一途は俺を見つめた。
「光さん、痛かった?てか、うーんと優しくしたつもりだったけど?」
「え?」
「え?」
えーーーーっ?
あぁぁぁぁぁぁ。
どんな仕打ちだよ!
家族に自分の夜の営みを知られてしまうなんて………。
「ってことで、光さんはどっちかというと奥さん、です」
頭を抱える俺。(そして多分親父も同じポーズをしてるだろう。キャッキャと騒いでるのは女性陣だけだから)
あぁぁっ。顔なんか上げられるか!バカヤロウ。
「オレの可愛い奥さん」
そんな俺の肩を抱き寄せる一途に、
チュ、と薄い唇が頬に押し付けられて。
どうにでもなればいい!と思い、でもたったそれだけでポ、と赤くなって、しかもなんだか物足りない!とか思っちゃう、俺。
もう、色々、詰んでる。
「光、一途くん?お夕飯食べて行きなさいよ」
母親がそう言ってタエさんに目配せをした。
「はい」と、答える一途より大きめに「帰るから!!」と叫ぶ俺に、一途は。
「欲しくなっちゃった?」
耳元で俺にしか聞こえない声で囁いた。
その後。
帰ってからどうなったのか、も、
月曜日に俺は無事に出勤出来たのか、も、
それはまた別の機会にするとして。
俺のメンドクサイ恋の話は、
きっとずっと、
幸せなまんまで続いてく。
「光さん、オレ、まだ足りない」
「無理!もう無理!」
隣にコイツさえいてくれたら。
きっとずっと、
こんな風に。
*完*
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