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甲高く響いたエトリの声に呼応するかのように、食堂の扉が乱暴に開け放たれた。飛び込むように入ってきたのは、背後を月の光に照らされた銀髪の騎士だった。
アラルは抜きはなった細身の剣を躊躇いなく振り下ろし、大柄な男の手を切り裂く。闇の中に鮮血が散り、食堂の机を赤く染めた。
不鮮明な唸り声が轟き、エトリを襲っていた男は切られた手を押さえて膝をつく。ぼとぼとと血が流れ、男の呻き声が食堂に暗く響いた。
アラルはエトリを無表情に見つめると、マントを外してその肢体を包み込んだ。マントをかけられたエトリは、ガクガクと震えながらその端をしっかりと握りしめる。
エトリは、なんの感情も垣間見えないアラルに近づき、そしてその肩口に身を預けた。
アラルは暫くそのままじっとしていたが、やがて顔を歪めると、エトリをきつくかき抱く。
全てが終わった時、遅れて食堂に入ってきたベールは、アラルとエトリの影が重なる様子を、息を詰めて見つめるしかなかった。
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