3話

4/4
前へ
/46ページ
次へ
 甲高く響いたエトリの声に呼応するかのように、食堂の扉が乱暴に開け放たれた。飛び込むように入ってきたのは、背後を月の光に照らされた銀髪の騎士だった。  アラルは抜きはなった細身の剣を躊躇いなく振り下ろし、大柄な男の手を切り裂く。闇の中に鮮血が散り、食堂の机を赤く染めた。  不鮮明な唸り声が轟き、エトリを襲っていた男は切られた手を押さえて膝をつく。ぼとぼとと血が流れ、男の呻き声が食堂に暗く響いた。  アラルはエトリを無表情に見つめると、マントを外してその肢体を包み込んだ。マントをかけられたエトリは、ガクガクと震えながらその端をしっかりと握りしめる。  エトリは、なんの感情も垣間見えないアラルに近づき、そしてその肩口に身を預けた。  アラルは暫くそのままじっとしていたが、やがて顔を歪めると、エトリをきつくかき抱く。  全てが終わった時、遅れて食堂に入ってきたベールは、アラルとエトリの影が重なる様子を、息を詰めて見つめるしかなかった。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加