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「ガートさん……。アラルさんがどうなるか、知ってるんですよね…?」
エトリのか細い声に、ガートは広い肩を竦めて目を伏せた。
「そりゃあ……。小耳には挟んでるがな…。今エトリに話す話じゃあないな」
それを聞くと、エトリのスミレ色の瞳がみるみるうちに潤み始めていく。それを見たガートはオロオロとするしかなかった。
2人の間に落ちた気まずい沈黙を破るように、エトリの住まいの玄関扉が小気味よくコンコンとノックされた。エトリが応じようと立ちあがるのを制して、ガートが扉の内側から外の人物に声をかける。
「どちらさんで?」
事件の後という事もあり、ガートの声は緊張感を漂わせていた。その固い問いかけに返されたのは、よく通る青年の声だった。
「騎士隊所属のベールです。エトリさんのお見舞いに来ました。もし良ければ少しお話させて頂けませんか」
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