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5話
嵐の中やって来たベールは、全身ずぶ濡れだった。燃える炎を思わせる赤い髪からは雫が落ち、玄関の床に点々と染みをつけていく。
「すみません。床を濡らしてしまうので、マントをどこか掛けさせてもらってもいいですか? あぁ、ありがとうございます」
ガートが持ってきた大ぶりの布を礼を言いながら受け取り頭を拭きながら、ベールはマントを外した。
濡れたものの始末を終えると、ベールは改めてエトリに向きなおる。ガートが気を利かせて別の部屋へと姿を消したのを見て、ベールは窓際の椅子に腰をかけているエトリの側へと近づいた。
「ベールさん……。どうぞ座ってください」
自分の座っている場所の正面の椅子に座るようベールを促すと、青年は素直にそこへ腰を下ろした。そして正面のエトリをしっかりと見据え、話し始める。
「俺が今日ここに来たのは、お見舞いと報告と……もう1つ理由があります」
榛色の双眸には様々な想いが浮かんでいた。どんな話でもちゃんと受け止めようと、エトリはベールの瞳を静かに見返す。
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