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2人は暫く、無言で見つめ合った。ガタガタ、と外からの風の音に促され、ベールはようやく口を開く。
「まずは今回の件が起きてしまった事をお詫びします。警備隊隊長と共に、隊の統率を測るのも任務の一つだったというのに。俺たちの力不足です」
そう言って深く頭を下げるベールは、淀んだ所の一切ない清廉さがあった。エトリはこの若者の未来を想像し、想いを馳せる。
「被疑者の容疑が確定し次第、俺は1度王都に戻る事になります。もしかすると、視察の任を解かれてしまう可能性がある。そうすれば、俺は王都に留まり今後は別の任務に就く事になります」
ベールは一旦言葉を切り、深く息を吐き出し、そして意を決したように強く、エトリを見つめた。
「一緒に王都へ行きませんか」
その言葉に、エトリは息を呑んだ。何も言葉を返せず、ただ榛色の瞳を見つめ続ける。
「あんな事があった後、すぐにこんな申し出、エトリさんにとってはあり得ないかもしれない。けれど、俺はこのままエトリさんと会えなくなるのは嫌だ。エトリさんと共にこれからも過ごして行きたい。俺と共に生きてくれませんか」
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