5話

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 真っ直ぐな、ひたすらに真っ直ぐな告白だった。エトリは若者の熱い視線を受け止めながら、胸が激しく高鳴るのを感じた。思えば、生まれて初めての告白だった。 「あなたが良いというまで、あなたに触れません。あなたを怖がらせたり絶対しないと誓います。俺はこれからもっと強くなり、成長してあなたを必ず幸せにする。だから、俺について来てほしい」  自分よりも6歳も年下のベール。だが騎士としての精神や揺るぎない正義感、そして溢れる生命力は、若さだけではないベール自身の魅力だった。  素直に、ベールの気持ちが嬉しかった。  行き遅れの、なんの取り柄もない年増の自分を、ここまで真っ直ぐに見つめてくれる。その想いはエトリの心に染みわたり、心の奥にぽっかりと空いた穴を塞いでいく。  だが、その真っ直ぐな想いを、エトリはどうしても真っ直ぐに受け取れなかった。 「私は……」  紡がれた言葉に、ベールの双眸が見開かれる。  春の嵐に閉じ込められ、2人のかき乱された想いは行き場を失っていた。
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