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向けられる笑顔に心踊り、ベールと並ぶ姿に嫉妬し、暴漢に襲われ、ほぼ裸同然の姿で寄りかかってきた姿にあろう事か欲情した自分が、卑しく、腹立たしく、そして嬉しかった。
そう、嬉しかったのだ。
過去の苦しみと共に消え失せた感情が、まだ自分にある事が。自分がまだ、誰かを愛しいと想う気持ちを持てる事が。
だが、自分ではエトリを幸せにする事は出来ない。なぜなら、自分は確実にエトリより先に死ぬからだ。大切な肉親を看取った時のエトリは、気丈ではあったが、その苦悩はふとした弾みに今でも現れていた。それを見ているのに、寿命のない自分から、エトリへ想いを告げる事は残酷だと、そう思っていた。
21歳という年の差は、アラルを情熱だけで突き動かすには大きすぎる障害だったのだ。
やはり、自分はここから1人消えていく方がいい。エトリはベールを選ぶべきであって、自分の想いは伝えるべきではない。
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