6話

3/3
前へ
/46ページ
次へ
 3日ずっと考え続けて、導き出した答えはやはりひとつだった。  アラルは部屋の片隅に置いてある、長年身につけてきた騎士の鎧に触れる。長くその身を守ってきた鎧は、多くの細かい傷はあったが、日々の手入れにより光沢を失ってはいない。この鎧を置いて、どこへ向かえばいいのか。まだ明確な答えは出ないが、心は決まっている。  机の引き出しから羊皮紙を取り出すと、アラルは椅子に座り筆を滑らせる。  それを書き終えた時、宿舎の部屋の扉を力強く叩く音に顔を上げたアラルは、返事を返す間も無く荒々しく開いた扉に赤く燃える炎を見た。 「アラル殿、話がある」  子はないが、息子がいればきっとこんな感じなのだろうかと、いつも思ってきたベールの姿は、その時決して息子のような姿ではなかった。  それは恋敵を前に決闘を申し込む、自分と同等の男性の姿だった。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加