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「……俺からは絶対に言いません。気になるのなら、エトリさんから直接聞くといいです」
両手を固く握り締めたベールは、ふとアラルの背後にある羊皮紙に気づき、目にも留まらぬ速さでそれを手に取った。そして、そこに書かれている文言を読みながら、次第に身体を怒りに震わせていく。
「あんたは、逃げる気なのか……!」
ベールは羊皮紙を握りつぶし、今度こそアラルの胸ぐらを掴み上げた。
「俺は許さないぞ。エトリさんの気持ちから逃げる事なんか、絶対に許さない。自分の気持ちから逃げる事なんか、絶対に許さない!!」
そのまま、ベールは思い切りアラルを殴りつけた。鈍い音がして、アラルは床に倒れこむ。何の抵抗も反応もしなかったアラルの瞳に、一筋の怒りの炎が立ち上った。
「お前に、何が分かる……」
初めて聞く暗く粗野な言葉遣いに、ベールはほんの少し目を見張った。
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