1話

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 その時、激しい音を立てて食堂の扉が開け放たれ、燃えるような赤髪の青年が入って来た。 「エトリさん! こんにちは! 今日のランチください!って、あれ!アラル殿と被ってしまったか……」  元気よく食堂に入ってきたのは、アラルと同じく西方警備隊の砦に派遣されて来ている国の騎士ベールだ。  ベールは先日19歳になったばかり。この視察を終えて王都に戻れば、見習いから一人前の騎士として認められ、正式に叙任される事になるという。  ベールは、身長も体格もアラルとほとんど変わらなかったが、成長期の若者のこと、これからさらに逞しくなり、背も伸びていくだろう事は簡単に予想できる。榛色をした意志の強そうな瞳、若く張りのある声と、明るく太陽のような性格はアラルの持つ穏やかな雰囲気とは正反対だった。 「君はいつも騒がしいですね。ベール君、今日は早朝から騎馬部隊の訓練ではなかったのですか」  アラルが眉根を寄せてベールを一瞥すると、赤髪の青年は溌剌とした様子をほんの少し抑えて、ぴしっと居住まいを正した。 「はい! その予定だったのですが、一頭具合の悪い馬が出てしまい、今獣医に診てもらっている所です。訓練は明日に変更となりました!」
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