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「そうでしたか。どの馬でしょう。心配ですね。後で見に行かねば」
報告を終えると、ベールはカウンターの近くまでやって来て、ランチの用意をし始めたエトリの様子をにこやかな笑顔で見やる。
「エトリさん、今日のサンドイッチはハムがいいな」
「お疲れ様です!ベールさん。ハムのサンドイッチですね。了解しました!」
「いつも言ってるけど、俺の方が歳下なんだし、敬語使わなくていいのに」
ベールは子供っぽく口を尖らして、エトリの様子を伺う。そんなベールを諌めるように、窓際から声がかかった。
「ベール君、エトリさんにとってはお仕事なのですから、そんな風に言うものではありません。邪魔になりますから何処か座ったらどうです」
ベールは仕方ない、と肩を竦めると、カウンターに1番近い定位置に腰を下ろして、厨房の様子を眺める。
ベールがエトリを慕っているのは、誰の目にも明らかだったが、当のエトリは全く気づいてはいなかった。
そんなベールの様子を横目で見つつ、アラルは顔に落ちて来たグレーの髪を撫で付け、小さな溜息を落とした。
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