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その日、いつも通り食堂で昼食を食べ終えたアラルは、ベールの報告を聞いて馬小屋へやって来ていた。
大きな馬小屋の片隅で、栗毛の馬を診ている馬丁に声をかける。
「お疲れ様です。調子が悪いというのは、この馬ですか?」
「おお、騎士殿。そうでさぁ、この馬の走りが悪いもんで、獣医に診てもらったら、どうやら蹄に怪我をしているようで」
アラルは栗毛の馬の鼻先を撫でながら、足元を伺った。
「前蹄のようですね。挫跖ですか」
「ええ、ええ、獣医はそう仰ってました」
どうやら走行中に石を踏んでしまったか何かで、蹄底が炎症を起こしてしまっているらしい。この辺りは岩が剥き出しの道路が多いため、馬の蹄の怪我が多いのは悩みの種だった。
「騎馬部隊の訓練場所も、少し考え直さねばなりませんかね」
そう言って思案しながら馬小屋を後にしたアラルは、ベールと相談するために砦の詰所へと足を向ける。
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