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3話
その日の夜、厨房の片付けを終えたエトリは食堂の戸締りをもう一度確認していた。
いくつかある窓を確認しながら外を見ると、辺りはすっかり夜の帳が下り、星が瞬いている。
ガートは翌日の仕入れのために、馬車で隣町へ出かけてしまっていたので、今夜はエトリひとりきりだった。
エトリはガートが仕入れへ出かける前に言った言葉を思い返して小さく息を吐く。
――くれぐれも帰り道は気をつけるんだぞ! なんなら騎士殿か隊員の誰かに夜道を送るよう声をかけておこうか?
そんな必要はない、とエトリは丁重に断った。ガートは何をそんなに心配しているのだろう。自分のような年増で行き遅れの女なんて、誰からも相手にされるわけないのに。
自嘲気味に笑い、エトリは食堂を後にしようと、入り口の扉に手をかけようとした。
その次の瞬間の事だった。
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