長い夜が始まる

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流れ落ちる血の量は、どの程度なのか全くわからない。 でも、確実に失血していることには違いない。 フラフラと眩暈がして、鉛のように重くなる体で歩いている事自体が夢みたいに思い始めた。 もうダメだ、という瞬間がすぐに突きつけられそうで身震いした。 ダメ!こんなに弱気になってはダメ!! 頭の片隅に居たのか、もう一人の自分が突然必死になって激励し始める。 唇の端が吊り上がったのを他人ごとのように感じながら、 頬を伝う涙の温もりを手の甲で拭った。 「大丈夫!うちに帰るのよ!」と、私は広大な牧草地で一言つぶやいた。 気持ちが落ち着いたような気がした。 頭が冷静になったところで、私は現実に直面した。 ついさっきまでは考えようともしなかったことだ。 それは、傷の程度のことだ。 この刺さったものが錆びた鉄かなにかで、 破傷風にでもなって敗血症になっていたら最悪だ。 命に関わる危険がかなり高い。 小さい頃に、有刺鉄線の錆びた先端を誤って肘に刺したことがある。 無知で幼い私は、家に帰って絆創膏をただ貼ってそのままにしていたら、傷が化膿して熱を持ち、全身が酷い倦怠感に包まれて、終いには意識が無くなるほど悪化させてしまったことがあった。 気付いた時には病院のベッドの上で寝かされていて、青白いお母さんの顔色が最初に目に飛び込んできたときは、心の底から恐ろしくなった。
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