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発見が遅れていたら、死んでもおかしくない怪我だったのだと聞かされ、生きていることにどれほど感激したか・・・。
昨年の秋、お母さんが亡くなったばかりなのに。
今度は私が自分の間抜けのせいで死んだりすれば、お父さんや弟には本当に申し訳ないことをしてしまう。
お母さんが死んだときの、あんな悲しそうな顔を二度とさせたくはない。
身を切られるほどに辛い死別を、これ以上繰り返すわけにはいかないんだ。
そうよ、死ぬわけにはいかない!
お母さんの分まで生きるって誓ったんだもの!!
私は焦りと共にかなり苛立っていた。
思えば最近の私は、いつも苛々してばかりいたように思う。
この持って行き場のない怒りは、どこからやってきたのだろう。
また、舌打ちした。
そしておもむろに腕時計を見た。
秒針がピタリと一点を刺したまま、静止している。
さっきも見て同じ気分に浸ったはずなのに、まだ時計に頼ろうとしている。
この時計はお母さんの形見の品だ。
「お母さん、私を守ってね」
歯を食いしばりながら、一歩ずつ前に進んでいく。
どれほどの時間を過ごしているのかを知る、その手段を失った今は、
ただ出来ることに集中する以外ないと思われた。
苛立ちが募っても、どうしようもない。
どうにもできない問題もあるのだ。
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