長い夜が始まる

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ふと、お父さんの顔を思い浮かべた。 虚しい目に無精ひげ。 言葉を失った乾いた唇と、影のある無表情。 あれはきっと、お母さんを失ったショックでどうにもならないことだったのだろう。 お父さんだって、きっと自分のことで手いっぱいのはずだった。 何もわかってあげられなかったのは、私の方だ。 構ってもらえないとか、過干渉だとか、勝手な言い分並べてお父さんを困らせて。 バカだった。 私は最低最悪の娘だった。 気付けばどんどん涙が溢れて、もう何も見えなくなっていた。 単純に前進を繰り返すことは容易なようでいて、今の自分にはとても難しいことになってしまっている。涙で霞んだ視界の向こうには家へと続く一本道が伸びているというのに、様々な感情や思考が行く手を阻んでいるかのようだ。 つまり、自分が自分の足を引っ張っているということに他ならない。 やっぱり自業自得なんだわ、何事にも。 とはいえ、足は前に出ているし、ふらつきながらでもこうして立っていられるのだから、常識的に考えれば全くもって大丈夫なのだろう。 「私は大丈夫!」と自分に何度も言い聞かせては、ひたすら歩くことに集中するように努めた。
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