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もうすっかり枯葉が落ちた広葉樹の森の脇にある小さな納屋の中には、昼間の陽だまりの余韻が残っているかのように暖かかった。
牛のために用意された草のブロックに腰を下ろして、私はそのままそこでうとうとしてしまった。
朝にはきっとケビンが私を見つけてくれるだろう。
血と泥と足跡があるのだから、きっと大丈夫のはず・・・
朦朧とする意識の中で、ふと誰かに名前を呼ばれた気がした。
これはきっと夢だ。
声がした方に顔を向けると、納屋の奥からお母さんが歩いて来たのだ。
その顔は微笑みながら泣いているようだった。
私を抱き上げて「よく頑張ったわね。もう大丈夫よ」と優しい声で囁き、あのいつものような手つきで私の背中を撫でてくれた。
お母さんの匂い、温もり、これは夢じゃないのかな・・・
私は薄れゆく意識のなかで何度もお母さんと叫んだけれど、きっと声にはならなかったんじゃないか、と思いながら暗い眠りに落ちた。
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