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ざわめきのような、沢山の人たちの声が周りでしている気がする。
目を閉じたままなので、気配やら声やら感じてはいるが、ここがあの真夜中の納屋だとしたら可笑しな話ではないか、と疑問が湧いてきた。
目を開けなければ。
私は薄い光の帯が上下に広がる様を眺めてから、両目をしっかりと見開いた。
なぜだろう。
ここは、事故に遭ったその場所じゃないか。
あの大勢の声は?気配は?
何が起きているの?
痛みを覚悟しながら頭を持ち上げてみた。
少しだけ痛いぐらいで、案外簡単に頭を上げることが出来たので、私は首を回して周囲を出来る限り見渡してみた。
夜露が乗った雑草が目の前にある。
どこかで鳥が羽ばたくような音が聞こえる。
朝焼けに染まった空は、怖いほどに美しくて幻想的だった。
まだ付近には朝霧が立ち込めていて、視界はそれほど良くはない。
傷を気にしながら、私は立ち上がろうとしたが動けなかった。
確か家までたどり着いて、それから納屋に入ったんじゃなかったか?
そして、そこで思わぬ人が待ち受けていて・・・
そう。
私はてっきり死んだのかと・・・
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