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ズキっと鋭い痛みが全身に走った。
「ああぁぁぁ」と声が漏れた。
耳に入ってくる自分の声は、しゃがれている。
現実だ。
紛れもなく、私は今ここにいる。
あれは夢だったの?
家に帰る夢だったというの?
あんなにリアルだったのに・・・
呆然としていると、どこからか砂利を踏むような音が聞こえてきた。
その音が段々と近付いてきて、ついにその正体が草間から覗いた。
一匹のキツネのようだ。
目と目が合う。
キツネは警戒するように頭を下げて鼻をひくつかせながら、じっと私を見ていた。
キツネは私を食べたりはしない、と思ったらなんだか可笑しくなって「ぷ」と噴出してしまった。
吃驚したようにキツネは飛び上がると、何かに警戒するようにきょろきょろしてから素早く去ってしまった。
キツネが去った方角とは真逆の方から、また足音が聞こえてきて、それはまた私を見つけると吃驚したように鼻をひくつかせた。
先程のキツネの何倍も大きな犬だ。
私は身構えたが、犬は遠慮なく私の体中の匂いを嗅いでいた。
そして怪我している辺りを集中的に嗅ぐと、今度は長くて柔らかな舌でぺろぺろと舐めまわした。
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