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外壁の汚れは雨風でもう消えてしまったけれど、
ここにこうしてしっかりと証拠が残っている。
あまりにも不思議な出来事に私は笑いを堪え切れずひとしきり大笑いした。
それから、その場に崩れ落ちるように号泣した。
あれは夢なんかじゃなかった。
私はここまで辿り着いていたんだ。
そして、この場所でお母さんに抱きしめられたのもきっと夢じゃない。
お母さんは私を守ってくれたんだ。
きっと、そう。
家族がこれ以上、死によって引き裂かれるのを止めてくれたに違いない。
今夜はお父さんに、お母さんの死の真相について聞いてみようと思う。
焦らなくても良い。
お父さんが話せる時が来るまで、待ってあげても良い。
それだけじゃなく、私の本音を素直に打ち明けてみよう。
私は今こうして、ここに生きていられているのだから。
「お母さんが守ってくれた命の灯を、宝物にするね」
日溜まりの納屋に、お母さんの残り香がした。
おわり
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