32人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
時々猛烈に感じる血の匂いは、私自身から溢れ出てくる匂いだ。
どれほどの出血量なのか、はっきりとはわからない。
でも、傷に突き刺さっているコレを引き抜いたときの出血量は、たぶん想像を超えるほど大量になるだろう。そうなったら、自分だけでなんとかするというレベルじゃなくなる。
私は誕生日の一週間前に出血死することになる。
自分の遺影を想像してから、頭を振って不吉なそれをなんとか打ち消した。
死ぬなんてことだけは、どうしたって避けたい。
血の匂いに誘われて、獣が寄って来ないかということだけが心配の種だ。
この辺は昔、狼が棲んでいたと死んだおじいちゃんが言っていた。
狼は血の匂いに興奮する?
そこまでは知らないけれど、私は心の底から怯えていた。
獣に噛み付かれ、引き裂かれるなんて最悪だ。
時々、暗闇の草原に意識を注いで気配を探ってみたが、
今のところ特に問題は起きていない。
とにかく、早く家に帰りたい。
安全な場所で、とりあえず落ち着いてから
傷の具合を見て病院に行くか、救急車呼ぶか決めれば良い。
疲れた体をソファーに投げ出して、ゆっくりと温かいコーヒーを啜りたい。
最初のコメントを投稿しよう!