長い夜が始まる

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時々猛烈に感じる血の匂いは、私自身から溢れ出てくる匂いだ。 どれほどの出血量なのか、はっきりとはわからない。 でも、傷に突き刺さっているコレを引き抜いたときの出血量は、たぶん想像を超えるほど大量になるだろう。そうなったら、自分だけでなんとかするというレベルじゃなくなる。 私は誕生日の一週間前に出血死することになる。 自分の遺影を想像してから、頭を振って不吉なそれをなんとか打ち消した。 死ぬなんてことだけは、どうしたって避けたい。 血の匂いに誘われて、獣が寄って来ないかということだけが心配の種だ。 この辺は昔、狼が棲んでいたと死んだおじいちゃんが言っていた。 狼は血の匂いに興奮する? そこまでは知らないけれど、私は心の底から怯えていた。 獣に噛み付かれ、引き裂かれるなんて最悪だ。 時々、暗闇の草原に意識を注いで気配を探ってみたが、 今のところ特に問題は起きていない。 とにかく、早く家に帰りたい。 安全な場所で、とりあえず落ち着いてから 傷の具合を見て病院に行くか、救急車呼ぶか決めれば良い。 疲れた体をソファーに投げ出して、ゆっくりと温かいコーヒーを啜りたい。
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