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03.変化
「好きです。」
声に気がついたのとほとんど同時、マズイ場面に出くわしてしまったことに私は気がついた。
でも、ここを通らないとエレベーターには乗れないし、ずいぶん目立つところで告白なんかしてるんだな、と、ちょっとだけ好奇心に駆られて、悪いとは思いつつ、どうやらエレベーターホールの脇にある、打ち合わせコーナーの観葉植物の影にいるらしい男女を透かし見る。
―――久坂さん!?
見慣れたスタイリッシュな美貌の横顔じゃなくって、当たり前だけど、会社仕様のスキのない生真面目な横顔。
向かい側で告白してるのは、……あれって、専務秘書の松井さんだ。
総務からステップアップした私なんかとは違って、入社してすぐに秘書課に配属されたバリバリのエリート。
しかも、秘書課きっての美人で、優秀な人だと社内でも有名な才媛。
「前からずっと、久坂さんのことが好きだったんです。でも、なかなか勇気がなくて、言えなくて……。」
使い古された告白の言葉さえも、松井さんみたいな美人が言うと、それだけでキラキラしく感動的な言葉に聞こえちゃうから不思議なものなんだな、なんて。
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