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平日の昼間なのでずいぶん空いている。バシアは窓の外へ視線を投げながら、
「マリクとだったら行かないんですか、公園」
「行ってもいいですけど、そういうデートの仕方を、マリクは知らないかなって」
「は?」
「マリクの知性の、八割方っていうか、いや、九割方はバシアさんの担当なんじゃないですか」
「なんの話です」
「デートプランとか、どうしようって相談したりしてません?」
バシアはドキリとした。
「最近、けっこう連れ出してくれるようになりましたけど、僕の好みとか予算を押さえつつ、僕の知らないお店とか連れてってくれるので」
そんなことか、とバシアはホッとしつつ、
「当たり前の努力でしょう。嫌がるところへ連れていったら、嫌がらせです」
「それはそうでしょうけど、僕の方は、マリクの好みが、まだそこまでわかってないからな……近くで面白いところを探すのも、だいぶさぼってたし」
それは、一緒に行きたい幼なじみが、もう、いないからだ。
「マリクはそんなこと、不満に思っていませんよ。むしろ最近は、あなたがずいぶん打ち解けてくれるようになって、嬉しいと言っていました」
「そうなんだ。マリクは僕の扱い方を習得したんですね」
「扱い方?」
「だって僕、あんまりオープンハートじゃないですから」
「そうでしょうか」
「バシアさんの目には、そうは見えませんか」
「あなたはとても正直な人だと思います。それから、誰彼構わず、あらゆることを吐露してまわるのは不用心ですから、今のままでいいのでは」
「それはどうも」
安道は苦笑した。
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