出会い

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「そういった理由を含め、南くんをその四校のうちの一つに入れようと考えています。財閥の子息が入るその四校ならばこの国一番の警備体制で、セキュリティーの面においても何ら申し分ありませんからね。…ま、それでもネズミが何匹かは侵入するようですが」 ネズミ…? 違和感を覚える単語に首を傾げていると、隣に控えるセツさんがそれに気づき、苦笑い浮かべて答えてくれた。 「ここで言うネズミとは、スパイや良からぬ企みを画作する犯罪者、それに暗殺者を意味します」 ……なんだか、えらく物騒な単語がぞくぞくと出てきたなと少し遠い目になっていたのが義父さんにバレたみたいだ。困ったように笑ってセツさんの言葉をさらに補足する形で教えてくれる 「財閥の子息、というのはお金になりますからね。それに加え身代金目的、あるいは子息を攫ってその父親とビジネスの交渉での取り引き、いろいろ闇深いものがあるのですよ。…あとは、愛人・妾・後妻といった人間が、前妻・もしくは血の繋がらない義理の息子が気に入らないからとならず者の暗殺者に依頼して殺しを依頼するケースがあるのですよ。学園ならば当主の目がないからと…。当然ながら、学園のセキュリティーは万全です」 ───ですが、と義父さんの顔が少し厳しい表情に変わる。 「ですが、そうは言っても抜け道など粗探しは必ずあるものです。…この世に完璧なものなどありません。どんなに完璧なセキュリティーが施されていようと、必ずどこかに小さな綻びがあるもの。…事実として、中には凄腕の暗殺者が学園内に潜り込むことはあります。…しかし、それもまた暗殺も未然に防げているのも事実。それは、なぜか… わかりますか?」 義父さんに突然、話を振られて一瞬きょとんとしてしまったけれど、考えるに考えて… 《護身術》という単語が出てくる。 「……護身術で自らの身を守った、ということですか?」 でも、その答えが否だとわかったのは義父さんが『そう思いますよね…』という言葉を漏らしたからで、 「…?」 「半分あっていて、半分間違い… ってところでしょうか」 そう言ってくすりと笑った。
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