出会い

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「四つの学園に入っているのは… なにも、表社会の人間の子供だけではないんです」 「!」 「裏社会の… 関わりを持つ人間の子息も、表社会の子供同様の人数で通っているんですよ。私が南くんを学園に入れるにあたって危惧していたのは… その理由でもあるんです。心配は無用だったようですが、クスッ」 「小さい頃から全寮制という籠に閉じ込められた子供たちは溜まった鬱憤を… 喧嘩や抗争で晴らそうと、血の気が多い者が多いんですよ。困ったことに、勝手に族やチーム、番長… など作っては他校の生徒だけでなく、学園内で派閥の争いなど喧嘩や抗争に勤しんでいる生徒が多いのが現状。 大変、嘆かわしいことに、その四校を纏めている理事長がまたクセの強い男で。彼は止めるどころか、黙認している節がある。。さすがに強姦などをやった生徒は退学させたりしているようですが…」 そんな学園に放り込む以上は、ある程度 戦えたほうがいいと思いましてね、それで先ほどセツに指南してもらうという形で対峙してもらったんですよ、と朗らかに告げる義父さんにもう何処から突っ込んでいいのか… わからなかった。 「───とまぁ、ここまで話せばおよそ察してはいると思いますが、その四校は… 普通の学園ではないんですよ」 ふぅ、と小さく溜め息つく義父さんの言葉に心の中で でしょうね、と相槌する。 「その四校は… 元々、マフィアの子供や裏社会の子供も一般の子供と同等に不自由なく通えるように建てられた学園で、不良や族の溜まり場が多く点在していた理由もあり、必然とその四校に一般の不良や族も集まるようになりました。それぞれの学園の番長が生徒たちを仕切っていて、その四校を治める理事長が… リチャード兄弟。彼らは裏社会の人間ならば知らない者がいない… 特に弟にあたるウィリアムズという男は誰よりも残虐性と冷酷な面を持ち合わせ、その名を轟かせています。 裏社会を牛耳っていると言われる彼は… なにを隠そう、昔まだ学生だった頃からの悪友というか腐れ縁と言いますか、それはもう長い付き合いで、かつて私は、副会長で… 彼は生徒会長をしていたんですよ」 「・・・え?」 裏社会の、…え?牛耳ってる男が理事長で、昔は義父さんと一緒に生徒会役員で、しかも生徒会長の任に就いていた、と…? 「……なにを隠そう、四大不良校で有名なそれら四つの学園は、かつて生徒会長だったウィリアムズが率いる生徒会メンバーによって治められています」 「………」 あまりに衝撃が強すぎて、なんて答えたらいいのかわからない。 「私も含め彼らはウィリアムズの傘下に入ることで新たにもう一つの名前を得たんです。…それが、南条家の始まり。ですから、南条家の歴史は浅いですが、もう一つの先祖代々受け継いだ本来の家名のほうの歴史は古いんですが、 しがらみだらけの、負の連鎖。受け継いだ其の名は… 遠い昔に棄ててしまいました」 ───なので、今となってはもう南条家という名が私の家名なんです、そう告げる義父さんはどこか遠く見つめていて、俺を見つめて細める瞳は… どこか悲しげに見えた。
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