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「南くんには新しい環境に早く慣れて頂くためにも、先ずは実戦が必要でしょう?1ヶ月も貴方のお相手をしている暇などありませんよ」
「・・・」
笑顔のまま固まる義父さん、え?ちょっと待って。セツさん…『実践』が『実戦』に聞こえたんですが?
一人、悶々としている間に義父さんは諦めたのか肩を竦めていて、残念そうに溜め息ついていた。
「はぁぁ、仕方ありませんね。南くんには1ヶ月間、特殊な学園で問題なく過ごす為にも此処での実戦が必要ですからね。…といっても、南くんには1ヶ月も必要ないと思いますが。まあ、合間に親子の仲を深めようじゃありませんか」
くすりと小さく微笑む義父さん… ああ、やっぱり実戦って変換されて聞こえるんだけど。
「しかし、旦那様。南くんはどちらの学園に入れるおつもりですか?」
セツさんの言葉に、そういえばさっき義父さんの説明の中で、学園の候補が四つあるって言っていたことを思い出した。
どうせなら、普通の学園のほうがよかったと遠目になっていた俺を余所に…
「もちろん、」
「南条自由ヶ丘学園に入れる決まってるでしょう?私が学園長として君臨しているので南くんに会いたくなったら学園長の特権を使って放送で学園長室に呼びますので。」
そうと決まったら、学園長室で南くんとの毎日のティータイムは本当に楽しみですね。そういえば。先日、英国から取り寄せた美味しい茶葉があるんです。あとはお菓子ですね!
───と。なぜか、既に俺を呼び出す前提の義父さんなんだけど、やめて。本気で止めて。なんの新手のイジメかって突っ込みたい。ただでさえ、学園に通うってのが億劫な上に、学園は普通じゃない面倒くさそうな予感しかしない。さらには義父さんから学園長として放送で堂々呼び出しかけるなんて、目立つ行為ぜっったい嫌だ!
「?どうしたんですか、南くん。眉間にしわが寄っていますよ」
目をパチパチして、首を傾げる義父さん…。そんな本人に全く悪意がないってのが本当にタチが悪い。南条自由ヶ丘学園だけは絶対にイヤだ。義父さんに毎日校内放送で呼び出しされるだなんて冗談じゃない。義父さんは好きだけど… それとこれでは話が別だ。何がなんでも適当な理由を付けて違う学園に行こう。そう、秘かに決意した。
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