出会い

20/33
前へ
/40ページ
次へ
『───さて、南くん。あとは実戦ですね』 人差し指を立てて唇に持ってくるセツさんはそう言ってニッコリ笑った。 ─────────……… ────… ドサッ! 最後の一人を蹴り、パンパンと付いた埃を手で払う。目の前に転がり、山と積もるのは、屍の山々… 否、義父さんを狙って放たれた刺客たちだ。 セツさんの話によればこういった刺客は飽きもせず、毎晩のように… それも深夜の時間帯。寝た頃を見計らって義父さんの首を狙って侵入するらしいけれど、いつも気配を消しているセツさんを筆頭とした他の執事を含めた者たちで返り討ちにしているらしい。 それを冷ややかに見下ろす俺は、隣でご機嫌に笑顔のセツさんとそんなセツさんを諌める義父さんを目の端で捉えた。 「さすがですね!上出来ですよ」 まだ、一週間と経っていないのに!と笑顔のセツさんに、 「セツ、いくら南くんが強いからと言っても彼は子供なんですよ?なにも、このような汚れ仕事をさせなくても…」 詰め寄る義父さんはその端正な眉を寄せていて、 「これくらい大丈夫ですよ義父さん。それに、義父さんの命を狙う奴らを俺も赦せませんし、それに… 成人して今よりもっと力を、義父さんを守るだけの知識を得ることが出来たら、 義父さんの迷惑でなかったら… 何れ、義父さんの護衛に付きたいと思っているのでこれくらいなんともありません」 義父さんの言葉を聞いて改めて感じた。 所詮、今の俺は義父さんやセツさんからしたらまだ子供で、多少なりとも戦える力があっても、それだけだ。『子供』というだけで義父さんに気を遣わせてしまう。こんな俺が義父さんを守れるわけがない。俺に足りないものが何なのか… それを俺は学ばなければいけない。 ……義父さんに救われたこの命を、何もわからない俺を何も言わず側に置いてくれた義父さんに、この恩義を返すためにも。 だから、 常に狙われる立場にあるという義父さんを守れるならばこの命を義父さんの為に使いたい。それが何も持たない俺が唯一できる恩返しだから───…。 だから、義父さんやセツさんが言う学園には正直行きたくないのが本音だ。どうせ行くならまだ普通の学園のほうが良かった…と思わなくもないけれど。 それでも、 義父さんやセツさんが俺の為を考えてちょっと変わった特殊な学園に入れようと言うならばそれは受け入れるつもりだ。……と言っても、毎日の校内放送での呼び出しを考えたら、南条自由ヶ丘学園には行きたくないのは変わらないけど。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

204人が本棚に入れています
本棚に追加