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「いや、なんでもないよ。それで、話を戻すけど… 手元に置きたいと言うなら、東条自由ヶ丘学園に入れること。僕の目が届きやすいからね。
それから、さらに条件を加えるなら…
あの子には定期的にコレを飲んでもらうことになるかな」
きょとんとする雪斗に苦笑を浮かべて、その手にコロンと二つの錠剤を落とす。
「これは…?」
錠剤の薬にその端正な眉が寄せる雪斗の表情に、軽く口角を上げると薄く微笑んだ
「……君が望むモノだよ」
「えっ、」
「あれ?忘れたのかい?ほら、前に言ってたでしょ。今、新薬を開発中だって。その副産物だよ。本来の目的とは少し違うけど、その作る過程でこの薬が精神の神経に直接働きかける作用が確認されたんだ。トラウマといった精神への干渉に関して、トラウマといった本人が感じる精神的苦痛を和らげる副作用があるんだ。
あくまで違う目的の為に作られた上での副作用に過ぎない。それに、本人が感じる精神的苦痛を緩和させるもので、完全に抑え込むものじゃない。それに薬自体も即効性とまでにはいかないけど…
少なくとも定期的に飲み続けたら、暗示のスイッチとなる発作も抑えられると思う。
───とまぁ、言っても。
これはまだ試験段階だから公にまだ公表していないけれどね」
「いいんですか、ウィリアムズ…」
「構わないよ。でも、雪斗。それはあくまで副産物の上に試験段階のものだ。そのことを頭に入れておいてよ?」
「ええ、助かりました… ウィリアムズ。本当にありがとうございます」
そう言って、ふんわりと柔らかな笑みを向ける雪斗に、現金なヤツ…と思ったのは胸の内に留めておくとして、
「錠剤は2種類。一つは毎日飲むものと、二つ目は発作時に自分の判断で飲むもの。さっきの様子からすると何か前兆があったんじゃないの?」
なにか、キッカケがあったはずだからと言えば雪斗は顎先に手を添えて考え込む。
『雨…』
「あめ…?」
雪斗がポツリと零した言葉を拾って問うと、ハッとしたように顔を上げた。
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