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「まあ、それはともかくとして… 南くんだっけ?あの子はさっきまでのことを覚えているのかも怪しいけど、彼自身に告げるべきか、悩みどころだねぇ」
顎先に手を添えて考え込む僕に雪斗はそうですね、と相槌を打つ
「……私としては、何も覚えていないあの子に出来れば言いたくありません。普通の子と同じように育てたいと思う私の我が儘になりますが」
「普通の子として育てる、という君の気持ちに賛同するわけじゃないけど、僕もその意見には賛成かな。君の言う普通の子として育てたいという意味じゃなくて、事実を伝えたとして、それがトラウマを容易に引き出すことになり兼ねない。僕はそこに懸念しているんだよ」
……それに、明かすなら必然的にそのキッカケとなる彼自身のトラウマに触れることになる。
「悪化しないという保障がないからね」
「…ま、出来るだけ学園に入れるあたり、南くんのそのことについては極力、他の者には伏せとくつもりだけど。なにせ、うちの学園は皆、くせ者揃いだからね… 学園に入ってからは本人次第だよ」
それに、あまり知られていないけど、東条自由ヶ丘学園には頼りのあの一族がいる…
そう告げると雪斗の目が大きく見開いた。
「あの、一族?」
ってまさか!と吃驚した声を上げる雪斗に僕は軽く口角を上げる。
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