デュラハンの吉日

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 僕は、彼ではない。人格は、明確に区別される。だから、彼がどんな思想を持って生きてきたのか、彼がどんな子育てをする筈だったのか、残念ながら僕にはそれを知る由はない。そして、恐らくは子育てという最大の楽しみを僕は彼から譲り受ける事になった。これは奪い取ったのではなく、譲り受けたのだと僕は納得する事にした。  僕は全てを受け入れた。  僕は全てを捧げる覚悟を決めた。 「僕と、結婚してください」  彼の手で僕は彼女の手を取り、彼の墓前で僕の意思を彼女に伝えた。 「はいっ」  応えた彼女の瞳は、ただ真っ直ぐに僕達を見ていた。 <了>
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