デュラハンの吉日

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 その事実を理解するのに十数秒間を要した。否、正確(・・)に理解するのに十数秒間を要した。心当たりはあり過ぎる程にある。それは、紛れもなく、僕の子供だ。違う、彼の子供だ。いや、でも、待ってくれ、この場合、どうなるんだ……? 「僕達の、子供、なんですか……?」  理解した筈なのに思わず疑問形になってしまった僕を、どうか許して欲しい。 「私達、三人の、子供です」  そう、恐らくはそれが最も適切な表現になる筈だ。論理的にはそれが最もこの状況を表現するに最適なものであるにもかかわらず、すぐには頭が納得しきらないのは、やはり僕の頭が常識にとらわれ過ぎているためだとも言える。 「私と一緒に、この子を、育てて頂けませんか?」  おなかに手を当てて、彼女が問う。しかしその問いは、問いであって問いではない。何故なら、彼女には僕がどう答えるかなんてわかり切っていた筈だから。  その期待を裏切る事無く、僕は是の意を即答した。
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