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「本当は、貴方の事を殺そうと思っていました」
彼女は続いて、今度はとんでもない告白をし始める。そういえば、彼女が僕の前に姿を現した時に抱えていたキャリーケースの中に肉厚の出刃包丁があったのを思い出した。あんな鉄塊で刺されたら、誰だってひと溜りも無いだろう。
「もし貴方がどうしようもない人で、生きる価値も無いようでしたら、貴方を殺して私も死ぬつもりだったんです。私の大切な人の体を使って、そんな人を生かす事など、私にはとても耐えられませんでした。でも、貴方はそんな人間では無かった。いつしか、貴方と共に在り続ける事が、私の中で素晴らしい事だと思うようになってしまいました」
僕が最も恐れていた事は、僕の意思に関係なく進行し続けていたのだ。
「だから、私は貴方に感謝しなければならないのです。彼の体と共に、再び歩む事を可能にしてくれた事に」
そう、もし僕がとんでもないクズ男だったら、今頃あのゼニゲバ医者に検死解剖をされていてもおかしくはなかったのである。
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