デュラハンの吉日

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「どうか、貴方を愛する事をお許しください」  その懺悔は、彼に対するものなのか、それとも僕に対するものなのか。少なくとも僕はようやく、彼女も僕と同じ苦しみに悩まされ続けていたのだと知った。否、そうだったのではないかという疑惑が確信に変わった。 「もし僕が貴女を愛すれば、貴女は幸せになってくれますか?」 「勿論です」 「彼は、僕達を許してくれるでしょうか」 「だから私は、(かすがい)を打ったのです」  子は鎹と申します。この場合、この鎹が繋ぎ止めるのは僕と彼女の事ではなく、彼と彼女である。僕が鎹で繋がれているのは彼とであり、しかもそれは実に物理的な手段によってである。僕の首を一周する痕が、その事実を物語る。僕は彼の体を通して、間接的に彼女と鎹で繋がれているに過ぎない。結果的にその繋がりは強固なものになったにせよ、だ。AとBが分かち難く結び付いている。BとCが分かち難く結び付いている。ならば確実に、AとCも分かち難く結び付いている。
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